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レポート

再生の街プロジェクト

一般社団法人被災事業所復興支援室・代表理事 古藤野智さん-「力を合わせて-現場の真実を起点に地に足ついた復興を」

2012年05月31日

あの3.11東日本大震災から14か月が過ぎようとしています。震災から2年目を迎え、人々から忌まわしい記憶が薄れる中、(中にはあえて思い出さないようにしている方もいるとは思うが)私はこのレポートの執筆を依頼されました。これは、この震災を見つめなおし、今までの活動を振り返り、今後の進むべき方向を確かめる良い機会だと思い、引き受けました。

私は、震災前、企業の代表として、フランチャイズの焼肉店を石巻地域で2店舗営んでいました。不幸にも店が沿岸部(石巻工業港、漁港)に立地しており、両店とも被災、休業を余儀なくされたのです。

 震災当初は皆生きるのが精いっぱいでしたが、ライフラインが回復した後、経営の事が頭をよぎり、なんとかしなければ、と考えるようになりました。未曾有の大災害で多くの事業所が流され、個人の力ではいかんともしがたい状況でした。そんな経営者仲間が立ちあがり、私が声掛けした20人余りの被災中小企業経営者が集まって、現場の真実を起点に、地に足ついた復興を目指し始めたのです。

 あらゆる資料、情報を調べても、災害時のセーフティネットが経営者にはなかったのです。失業保険にも該当せず、家が残った経営者は、被災者生活再建支援制度も適応されず、貯金を切り崩して再建の道を探るしかなかったのです。

 その当時から我々は、真の復旧・復興には仕事場、雇用の復活が必要、との認識でしたので、経営者への立て直し支援を国に訴えました。

ただ陳情だけに頼るのではなく、集まった熱い仲間が母体となり「いしのまき被災企業『元気』復興委員会」が設立されました。「いつまでも行政に頼ってばかりいないで、自分たちで協力して復興の道を模索して行こう!」という考えの元、現在まで14回の会議を重ねています。我々の会議はいつも、現状の報告が各事業所から行われ、問題を共有していきます。その時期によって必要な物、問題点は変化していきますので、それに対し的確な対策を講じる必要があるのです。

 震災後、全国の様々な団体から、我々の元に支援の申し出を頂きました。「東京で販売の場を設ける」「販売のお手伝いをする」という支援要請が多かったのを覚えています。

 しかしながら、その当時は皆、生産設備を失い、売りたくとも商品が出せない、という企業が大半でした。最初に必要だったのは、事業所を立て直す復旧資金だったのです。

 そこで、我々は自ら全国の皆様の支援を受皿として、被災事業所向け支援金募集サイト「がんばっぺ石巻」を立ち上げたのです。「元気」復興委員会のメンバーを中心に10社ほど企業にエントリーしていただき、寄付を募りました。事務局は私が設立した社団法人「被災事業所復興支援室」が行い、復旧資金の捻出を行う役割を担ったのです。ミュージックセキュリティーズさんや、一部の一口オーナー制度のように、何千万単位の資金が集まった訳ではありませんが、支援金を被災した経営者に応援メッセージとともに渡した時、一番大切なモチベーション向上に役立てたのかな、と自負しております。

 昨年後半から徐々に、被災が軽かった事業所の一部を修理したり、他の地域の同業者の協力をもらったりして、少ないながら商品を出せるようになってきました。そんな商品をまとめて、パック商品として売り出したのが「復興企画商品『絆』」です。「絆」は年末から現在まで、応援買いしたいという全国の皆様の要望に応え、多くの販売数を上げることができました。また、大阪の青年会議所様の協力で、大阪道頓堀の大手飲食店経営者との商談会が実現し、今では「串揚げだるま」様や「お好み焼き千房」様のお店で我々「元気」委員会の会員企業の食材が仕入れられ、主力メニューとして販売されています。一時の応援買いではなく、継続的なビジネスマッチングの成功例だと思います。

 行政の復興メニューを見てきた時、どうしても中央の役人が考え、使い勝手の悪い物が多いのは否めません。支援はスピード感がもっとも重要です。税金を投入するために仕方がない部分はありますが、いたずらに審査を複雑にし時間を費やすのでは、取り返しのつかないことになります。現に、事業所復旧が遅れたため、今までの売り場は他の被害の受けていないエリアの商品に取って代わられ、復旧後戦力となる若い労働力はとうに流出してしまいました。国のトップが、予算は現場判断を尊重しきちんと手当てするから市町村レベルで早急に復旧にかかれ、と言えば結果は大きく違ったでしょう。

 しかし、今嘆いても仕方がありません。今後は更なる販路確保のため、各企業が努力するしかないのです。

 被災事業所復興支援室は、2年目で寄付金が集まりづらくなった今、新しい調達方法を検討しています。我々石巻の企業の多くは、中小企業庁の「グループ助成金」が採択され本格復旧に着手しております。しかしながら、いまだ助成金も確保できず、必要な融資もままならない事業所も少なくありません。そのために、仙台の財団法人と提携し、被災地発(初)のNPOバンクを立ち上げるべく、関係者と準備しています。「がんばっぺ石巻」で集めることができた「事業所全体への支援金」もNPOバンクの融資原資として活用する予定です。

 震災後2年目は、ブーム(と言っては語弊がありますが)も去り、復興に対する本当の覚悟が試されます。地味でも一歩ずつ、確実に前進できる力が必要です。また、今までそれぞれ行っていた支援事業も、お互いの長所を自覚し、それぞれの団体が情報共有し、補完しながら進んでいく必要があります。まさに、「力を合わせて-地に足ついた復興を」です。仲間と協力して考え、そして進むのが、やりがいのある楽しい道のりなのは、「元気」復興委員会で経験しているのですから。

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