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佐藤造船所プロジェクト

諦めず前へ進め!-震災後初めて進水させた「第八大成丸」船主・津田正隆さんへのインタビュー

2012年05月24日

☆前回のレポート「"地域の屋台骨"造船業の復活が、新しい地域経済の鍵-船大工兄弟の決意」はこちらよりご覧ください。

佐藤造船所では現在、限られた設備機械を活用し、数多く寄せられている養殖・沿岸漁業者からの修理・整備の依頼に対応しています。

東日本大震災により大きな被害を受けた後、初めて修理を終えて進水させた船が、「第八大成丸」。今回は、「第八大成丸」の船主、津田正隆さんへのインタビューを、皆さんにお届けします。

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津田さんは、近海の小型船(10t未満)底引き網漁業に従事し、春から秋にかけては、カレイ、ヒラメを主に、冬はタラ、タコを獲っていらっしゃいます。8年前に中古船を購入して独立され、津田さんご本人とご子息が海に出て、奥様と娘さんが流通、事務などをご担当され、ご家族で事業を運営されています。

東日本大震災の影響で、震災前に所有していた船2隻が被災し、漁を継続することが困難となりました。

以下、津田さんからのお話です。

 

私自身、祝田*1出身で、佐藤造船所さんとは旧知の間柄で、所有していた「第八大芳丸」の上架(じょうか)*2等でお世話になっておりました。

(東日本大震災によって)自宅は全壊、所有していた2隻の船や車両も被災し、ましてや、(2隻のうちの1隻は)前年10月に進水したばかりの新船だった為、その現実を受け止める事が出来ず、先の事を考える余裕もありませんでしたが、日が経つにつれ漁への思いが強くなり、新船の建造を決心しました。新船が出来る間、仕事する為の中古船を探し始めた頃、知人を通じ、(佐藤)造船所内で被災した船を使用する事にしました。

横たわったままの被災船を起こすにあたり、(佐藤)造船所自体も甚大な被害で使用できる状態でなく、(佐藤造船所に)通じる道路も他の被災船でふさがって通れず、さまざまな障害も多く、費用や日数もかかるとの事で、思うように進められない状況の中で、佐藤氏の尽力により1つ1つ解決し、進水までこぎ着けました。相談しながら諦める事なく進められたのが、結果して良かったと感じます。

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早く修理したことにより、いち早く、「海に出られる」という前向きな気持ちになれました。震災で船を失い、数ヶ月はガレキ処理などに従事していましたが、佐藤造船所の(佐藤)文彦さんから「(佐藤造船所内で被災した)『第二十一宝徳丸』を直せるかもしれない」と連絡を受けました。佐藤造船所さんの後押しが、とても大きかったです。

修理を終えて進水した時は、待ち遠しかった思いと、これから海で漁ができるという安心感を覚えました。改めて思う事は、(第八)大成丸に関った(佐藤)造船所や業者、組合が障害に負けず、諦めなかったことに感謝しています。

震災前の状況への回復には、まだまだほど遠いです。船はあっても、放射能汚染の風評被害の影響から操業制限を受けているほか、燃料の高騰による収益への影響もあって、満足に漁ができておりません。ガレキは片付いてきましたが、震災直後よりむしろ不安です。息子の「漁をやりたい」という意志に応えてあげたいです。

満足に漁ができない時間が続いていますが、本格的に漁ができるようになった時のために、日々、漁具の手入れなどを行っています。私たちは、諦めることなく、前に進んでまいります。

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津田さんからお話を伺い、改めて、石巻の方々が、海を愛し、海とともに長い時間を積み重ねてこられたことを実感しました。

その一方で、被災した宮城県の漁業経営体のうち、経営を再開できているのは42%(2012年3月11日時点、農林水産省調べ)。震災前に漁業に携わっていた約6割の経営体が、震災から1年が経過しても、漁業を再開できておりません。

佐藤造船所では、津田さんの船の進水後に取り掛かった震災後2隻目の船が着水*3し、GW中には引き渡しを完了しました。現在、佐藤文彦さん、孝明さんのお二人を中心に、寝る間を惜しんで船の修理に注力していますが、相応数の修理待ちの船があるほか、修理を待ち切れない地域の漁業者は、近隣他県などの造船所に船を持ち込んでいるという話も聞かれました。

また、修理作業の効率化には、被災した船体引き上げレール(修理ドッグ)を新たに建設することが不可欠なのですが、地域での防潮堤設置のための調整に時間がかかっており、限られた環境の中での修理を余儀なくされています。

被災地の産業復興に向けた動きはまだまだ道半ばで、課題も山積されています。

そんな中、地域の方々が地域の後押しで大好きな海に戻れるよう、船の修理・整備を通じ、地域新生に貢献している、佐藤造船所。東北共益投資基金では、佐藤造船所が、津田さんのような喜びをさらに増やし、地域の“絆”をさらに深める推進役となれるよう、引き続き幅広く支援を続けてまいります。

*1 : 佐藤造船所の所在地、宮城県石巻市渡波字祝田

*2 : 造船所に船舶を揚げて整備すること

*3 : 内装等の修理を残すのみとなった、引き渡し前の最終工程

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